1. はじめに
Unityでゲーム開発をしていると、「処理が重いな…」「フレームレートが安定しない…」と感じる瞬間ってありませんか? そんなときに役立つのが、マルチスレッド処理です。特にUnityには、CPUの複数コアを効率的に使える「Job System」と、その処理をさらに爆速にしてくれる「Burst Compiler」という仕組みが用意されています。
本記事では、まずC#の基本的なスレッド処理をおさらいしながら、Unity独自のJob SystemとBurst Compilerを組み合わせて実際にどれくらい高速化できるのかをわかりやすく解説していきます。 「難しそう…」と思う方も大丈夫!実際にコードを動かしてみることで理解が深まり、きっと並列処理の面白さを感じられるはずです。
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2. マルチスレッド処理の基礎
2-1. シングルスレッドとマルチスレッドの違い
まずは基本から押さえておきましょう。
プログラムがシングルスレッドで動く場合、CPUは「一度にひとつの命令」しか処理できません。これはまるで、一人の作業員が全ての仕事を順番にこなしているようなものです。
一方、マルチスレッドでは、CPUの複数コアを利用して「複数の命令を同時に処理」できます。つまり、複数の作業員で同時に仕事を分担するイメージですね。
2-2. メインスレッドの役割
Unityでプログラムを動かすとき、最初に実行されるのは「メインスレッド」です。 このメインスレッドが、新しくスレッドを作成してタスクを並列実行させ、完了したら結果をまとめるという流れになります。
ゲーム開発においては、描画やUIの更新はメインスレッドでしか行えないというルールがあるため、並列処理を導入する際はこの制約を意識する必要があります。
2-3. マルチスレッドの課題
もちろん良いことばかりではありません。マルチスレッド処理にはいくつかの注意点があります。
- スレッドを作りすぎると、CPUリソースを奪い合ってしまう
- 頻繁なコンテキスト切り替えが発生すると逆にパフォーマンスが低下する
- 変数やメモリに同時アクセスすると「データ競合」が起こる

こうした問題を避けるために、スレッドプールや専用の仕組みを使って効率的に制御する必要があります。
3. C#での基本的なマルチスレッド実装
Unityのメインスレッド以外で処理を実行したいとき、まず試してみたいのがC#のTask機能です。 特に Task.Run() はシンプルで、別スレッドで処理を走らせるのに便利です。
3-1. Task.Run()を使った基本例
例えば、無限ループでメッセージを出力するシンプルな例を考えてみましょう。
using System.Threading.Tasks;
using UnityEngine;
public class LoopSample : MonoBehaviour
{
void Start()
{
Task.Run(() => {
while (true)
{
Debug.Log("Test");
}
});
}
}
実行するとコンソールに「Test」が延々と表示されます。ただしこのままではUnityを停止しても処理が止まらないため、環境によってはフリーズの原因になります。
3-2. 無限ループを安全に制御する
そこで重要になるのが「フラグを使った終了処理」です。以下のように OnApplicationQuit() を活用して制御します。
using System.Threading.Tasks;
using UnityEngine;
public class SafeLoopSample : MonoBehaviour
{
private bool isRunning = true;
void Start()
{
Task.Run(() => {
while (isRunning)
{
try
{
Debug.Log("Test");
}
catch (System.Exception e)
{
Debug.LogWarning(e);
}
}
});
}
void OnApplicationQuit()
{
isRunning = false;
}
}
このようにすることで、アプリ終了時にループが停止し、Unityエディタがフリーズするリスクを回避できます。
3-3. デバッグを快適にする
マルチスレッドの処理はバグを見つけにくいことが多いので、ログ確認がとても重要です。
標準のコンソールだと追跡が大変ですが、以下のようなアセットを導入すると効率的にデバッグできますよ。
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4. Unityでのマルチスレッド処理の選択肢
Unityで「重い処理を分散させたい」と思ったときに使える選択肢は、実はけっこうあります。ここでは特徴と使いどころをギュッと整理しますね。
4-1. C#標準:Task / Parallel / LINQ (PLINQ)
- Task:
Task.Run()で手軽にサブスレッドへ。非同期フローを組みやすいのが利点。 - Parallel:
Parallel.For/Parallel.ForEachでCPUコアを使い切る処理に向く(画像処理・数値計算など)。 - PLINQ:
AsParallel()でLINQの処理を並列化。記述量が少なく試しやすい。
※ ただしUnityのAPI呼び出し(Transform操作やUI更新など)はメインスレッド限定。サブスレッド側は純計算・データ整形などに絞るのが基本です。
4-2. 外部ライブラリ:UniTask / UniRx
- UniTask:
await UniTask.SwitchToThreadPool()で計算をスレッドプールへ、await UniTask.SwitchToMainThread()で安全にメインへ戻す——この往復がとても書きやすい。 - UniRx:ストリームで非同期を表現。
Observable.Start(...)などでバックグラウンド作業→メインスレッドに結果通知、というパターンを綺麗に書けます。
「まずはasync/awaitに慣れたい」「メイン⇔サブの行き来を読みやすくしたい」なら、UniTaskが特におすすめです。
4-3. Unity専用:Job System & Burst Compiler
大量データを安全に・高速に処理したいならここが本命。
Job Systemはメモリ安全性(NativeArray等)とワーカースレッドの効率的なスケジューリングが特徴。
Burst CompilerはC#ジョブをネイティブコードに最適化して桁違いの実行速度を叩き出します。
- 向いている処理:物理シミュレーションの前計算、頂点変形、経路コスト計算、ノイズ生成、ベイク用の大量サンプリング 等
- 注意点:メインスレッド専用APIはジョブ内で使えない/データは
NativeArrayなどを用意/ジョブの依存関係を正しく設計
4-4. データの可視化・検証をラクにするツール
ジョブや並列処理の中身を素早く検証したいとき、インスペクター拡張やログ強化は効果絶大です。配列サイズや統計値、実行フラグの切り替えUIなどを用意しておくと、計測と反復が一気に進みます。
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フォーム化・ボタン化・Foldoutなどで実験用GUIを即席で作れて便利。NativeArrayの長さや閾値、ジョブの並列度などを実行時に安全に切り替えられます。
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ログ検索・フィルタ・色分け・タイムスタンプで並列ログの追跡が圧倒的に楽。ジョブの開始/終了や例外検出を素早く見分けられます。
4-5. どれを選ぶ?(判断フローの目安)
- まずは試す:小さな並列化 →
Task/Parallel.For/AsParallel() - UIやメインスレッド戻りが多い:書きやすさ優先 → UniTask
- 本気で高速化・大量データ:設計から見直して → Job System + Burst
5. Job System & Burst Compiler 実装例
ここからはUnity専用のJob SystemとBurst Compilerを組み合わせて使う実践的な例を紹介します。 CPUの複数コアをフルに活用できるので、大量のデータ処理や繰り返し計算で大きな効果を発揮します。
5-1. Jobの定義
まずはシンプルなIJobの定義から。以下は配列の要素をすべて2倍にする処理をJobで書いた例です。
using Unity.Burst;
using Unity.Collections;
using Unity.Jobs;
using UnityEngine;
[BurstCompile] // Burstで最適化
public struct MultiplyJob : IJob
{
public NativeArray<int> numbers;
public void Execute()
{
for (int i = 0; i < numbers.Length; i++)
{
numbers[i] *= 2;
}
}
}
このように [BurstCompile] 属性を付けるだけで、C#コードがネイティブコードに変換され、処理が大幅に高速化されます。
5-2. Jobの実行
次に、このジョブを呼び出す方法です。
MonoBehaviourから Schedule() を使って実行し、Complete()で完了を待機します。
public class JobSystemExample : MonoBehaviour
{
private NativeArray<int> numbers;
void Start()
{
numbers = new NativeArray<int>(5, Allocator.TempJob);
for (int i = 0; i < numbers.Length; i++)
{
numbers[i] = i + 1;
}
var job = new MultiplyJob
{
numbers = numbers
};
JobHandle handle = job.Schedule();
handle.Complete();
foreach (var num in numbers)
{
Debug.Log(num); // 2,4,6,8,10 と出力される
}
numbers.Dispose();
}
}
この例では単純な数値処理ですが、実際のゲームでは頂点変形やAIの経路計算などに応用できます。
5-3. IJobParallelForで並列処理
さらに効率化する場合は、IJobParallelForを使って配列を複数スレッドに分割して並列処理できます。
[BurstCompile]
public struct MultiplyParallelJob : IJobParallelFor
{
public NativeArray<int> numbers;
public void Execute(int index)
{
numbers[index] *= 2;
}
}
大量データを扱うときに効果が大きく、CPUコア数に応じて自動で処理を分散してくれるのがポイントです。
5-4. Burst Compilerの効果
Burstを有効化すると、単純なループ処理でも数倍以上の速度向上が確認できます。 特にモバイル端末でも恩恵が大きいため、バッテリー消費を抑えつつ快適なプレイ感を実現できます。
5-5. 参考リンク
より詳しい解説はUnity公式マニュアルでも確認できます。Job Systemの設計思想や制約事項を理解するのに役立ちます。
👉 Unity公式ドキュメント:Job Systemマルチスレッド処理
6. まとめ
今回はUnityでのマルチスレッド処理について、基礎から応用までを整理しました。
最初にC#標準の Task.Run() でシンプルな並列処理を試し、その後にUnity専用のJob SystemやBurst Compilerを使うことで、より効率的に処理を分散できることがわかりましたね。
- シングルスレッドはシンプルだが、処理が集中すると限界がある
- TaskやParallelで基本的な並列処理を理解できる
- UniTaskやUniRxを使うと非同期フローを綺麗に書ける
- 大量データの本格処理にはJob System & Burstが最適解
これらを組み合わせることで、ゲームの処理落ちを防ぎ、より快適なプレイ体験を提供できるようになります。 初心者の方はまずTaskで慣れてから、徐々にJob System & Burstに挑戦していくのがおすすめです。
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Unityでのパフォーマンス改善は「少しの工夫」が大きな違いを生む世界です。ぜひこの記事を参考に、実際にコードを試しながら自分のプロジェクトに取り入れてみてくださいね。
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今回紹介したマルチスレッド処理やパフォーマンス最適化に関連して、さらに学びを深められるおすすめ記事をまとめました。あわせてチェックしてみてくださいね。
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よくある質問(FAQ)
- QJob SystemとCoroutineの違いは?
- A
Coroutine(コルーチン)は「非同期的な処理の流れ」を作れる仕組みですが、実際にはメインスレッド上で動いています。
一方、Job SystemはCPUの複数コアを活用して並列処理を実行できるのが大きな違いです。
そのため、軽い演出や待ち時間処理はCoroutine、大量データの高速計算はJob Systemと使い分けるのがベストです。
- QJob Systemを使うと必ずBurst Compilerも必要?
- A
いいえ、必須ではありません。
Job System単体でも並列処理は可能ですが、Burst Compilerを有効化することで実行速度が数倍以上向上します。
「本番用ビルド」ではBurstをONにして、開発中は必要に応じて切り替えると効率的です。
- QモバイルゲームでもJob Systemの効果はある?
- A
はい、あります。最近のスマートフォンもマルチコアCPUが当たり前なので、Job Systemによる並列処理は効果的です。
特に3Dモデルの処理や物理演算、AI計算などをオフロードすると、バッテリー消費を抑えつつスムーズな動作を実現できます。







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