ゲームやアプリを作っていると、少し直したらすぐにビルドして動作確認したくなりますよね。でも毎回手作業でビルドしていると、待ち時間が長いうえに操作ミスも起こりやすくて、気づけば開発よりビルド作業に時間を取られていることも多いのではないでしょうか。
特にチームで開発していると、人によってビルド環境が微妙に違って「自分の環境では動くのに」というすれ違いが起きることもあります。こうした悩みは、UnityのCI/CDという仕組みを取り入れることで解消できる可能性があります。
この記事では、UnityのCI/CDにはどんな選択肢があるのか、そして自分の状況に合った方法をどう選べばいいのかを整理しながら、GitHub Actionsを使った具体的な導入手順まで丁寧にご紹介していきます。
UnityのCI/CDとは?CIとCDの違い
CI/CDという言葉は、実は2つの工程がセットになった略語です。ここを最初に整理しておくと、このあとの説明がぐっと分かりやすくなります。
CI(継続的インテグレーション)は、コードを変更するたびに自動でビルドやテストを実行してくれる仕組みのことです。誰かがコードを書き換えても、すぐに「ちゃんと動くビルドになっているか」を確認できます。
一方のCD(継続的デリバリー)は、そのビルドをテスト環境や本番環境にリリースするところまでを自動化する仕組みです。つまりCIが「作る・確かめる」担当で、CDが「届ける」担当というイメージですね。
この2つはセットで語られることが多いのですが、実際にはどちらか片方だけを導入することも可能です。たとえば「自動テストだけ回したい」ならCIだけでも十分ですし、リリースまで自動化したいならCDまで組み込む必要があります。
Unity開発の場合も同じで、まずは「ビルドとテストを自動化するCI」から始めて、慣れてきたら配布までを自動化するCDに広げていくという進め方が現実的です。

次は、その具体的な始め方をどう選べばいいか一緒に見ていきましょう。
自分に合うCI/CD手法の選び方
UnityのCI/CDには、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれ得意なことが違うので、まずは全体像を比較しながら、自分の開発スタイルに近いものを見つけていきましょう。
| GitHub Actions(GameCI) | セルフホステッドランナー | Unity Build Automation | |
|---|---|---|---|
| 初期構築の手間 | 少ない | 多い | 少ない |
| ランニングコスト | 無料枠あり | 自前PC次第 | プラン次第 |
| ビルド速度 | 標準的 | マシン次第で高速 | 標準的 |
| プラットフォーム対応 | 幅広い | 幅広い | 幅広い |
| 管理の柔軟性 | 設定はYAMLで管理 | 自由度が高い分、保守も必要 | インフラ管理は不要 |
迷ったときは、次のような目安で選んでみてください。
- 個人開発や小規模チームなら、まずはGitHub Actions(GameCI)を無料枠から試してみる
- プロジェクトが大きく、頻繁にビルドを回すならセルフホステッドランナーでビルド速度を優先する
- インフラの管理にあまり時間をかけたくないならUnity Build Automationを検討する
ホステッドランナーとセルフホステッドランナーの違い
ここで少し混同しやすいポイントを整理しておきます。GitHub Actionsを使うとき、ビルドを実行してくれるコンピューターのことを「ランナー」と呼びます。
GitHubが標準で用意してくれているものがホステッドランナーで、特別な準備なしにすぐ使えるのが魅力です。ただし、マシンのスペックやストレージ容量には制限があるため、大規模なプロジェクトでは物足りなさを感じることもあります。
一方のセルフホステッドランナーは、自分で用意したパソコンをビルド専用のランナーとして登録する方法です。マシンスペックを自由に選べる分、環境構築やメンテナンスは自分たちで行う必要があります。
この記事では、まず取り組みやすいGitHub Actions(GameCI)を軸に、具体的な導入手順を解説していきます。

セルフホステッドランナーやUnity Build Automationについては、後半で選び方の目安を改めてご紹介します。
GitHub Actions導入前に知っておきたいこと
「YAMLもGitもよく分からないけど大丈夫かな」と不安に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、細かい知識がなくても手順通りに進めれば設定はできますが、最低限の前提だけ先に押さえておくと理解がスムーズになります。
まずGitについては、コードの変更を記録して、GitHub上のリポジトリにpushする、という基本の流れだけ分かっていれば十分です。CI/CDは、このpushのタイミングをきっかけにして自動で動き出す仕組みだと考えてください。
次にGitHub Actionsのワークフローですが、これは「どんなときに」「何を実行するか」を書いたYAMLという形式の設定ファイルのことです。.github/workflowsというフォルダの中にこのファイルを置くと、GitHubが自動で読み込んで実行してくれます。
最後にUnityのバッチモードビルドという言葉も出てきます。これは、Unityエディタの画面を開かずに、コマンドだけでビルドを実行する方法のことです。人がボタンを押さなくてもビルドできるからこそ、自動化が成り立つというわけですね。
ここで1つ誤解しやすいポイントがあります。GameCIというライブラリを導入すれば、それだけで全部自動になると思われがちですが、実際にはワークフローファイルの記述やライセンス設定など、いくつか自分の手で行う設定が必要です。GameCIは、あくまでその作業を助けてくれる土台という位置づけになります。

これらの前提を頭に入れたうえで、次から実際の設定手順に進んでいきましょう。
GitHub ActionsでUnityライセンスを設定する手順
GameCIを使ってUnityのビルドをGitHub Actions上で動かすには、まずUnityのライセンスを認識させる必要があります。ここが最初のハードルになりやすいので、順番に進めていきましょう。
ワークフローファイルを作成する
最初に、ライセンスをアクティベートするための設定ファイルを用意します。
- UnityプロジェクトのリポジトリでGitHub上に
.github/workflowsというフォルダを作成する - その中に
activation.ymlなどの名前でワークフローファイルを配置する
このファイルは、ライセンスの申請に必要な処理をGitHub Actionsに実行させるための指示書のような役割を持っています。
ライセンスリクエストファイル(alfファイル)を取得する
次に、Unity側にライセンスを申請するためのファイルを作ります。
- 作成したワークフローファイルをデフォルトブランチにプッシュする
- GitHub Actionsが自動的に実行される
- 実行完了後、詳細画面の「Artifacts」から生成された
alfファイルをダウンロードする
Unityライセンス(ulfファイル)を取得する
ダウンロードしたalfファイルを使って、実際に使えるライセンスファイルを発行してもらいます。
- ブラウザでUnityのライセンスアクティベーション専用ページにアクセスする
- ダウンロード済みの
alfファイルをアップロードする - 用途に合ったライセンスを選択する
- 発行された
ulfファイルをダウンロードする
alfファイルは「ライセンスをください」という申請書のようなもので、ulfファイルはその申請が通ったあとに発行される、実際に使えるライセンス本体だと考えると分かりやすいです。名前が似ているぶん混同しやすいので、役割の違いだけ覚えておくと迷いません。
取得したライセンスをGitHub Secretsに登録する
最後に、発行されたulfファイルの中身をGitHubに安全な形で登録します。
- GitHubリポジトリの「Settings」から「Secrets」の登録画面を開く
- Nameに
UNITY_LICENSEと入力する - Valueに、ダウンロードした
ulfファイルの中身をそのままコピーして貼り付ける
ここまで完了すると、GitHub Actions上でUnityのライセンスを使ったビルドやテストが実行できる状態になります。

次は、実際にテストとビルドを自動で走らせる手順を見ていきましょう。
テスト・ビルドを自動実行する手順
ライセンスの設定が終わったら、いよいよテストとビルドを自動で走らせる段階です。ここでは、実際にワークフローを作って実行し、結果を確認するところまでを進めていきます。
テスト実行用のワークフローを作成する
まずは、コードの変更が正しく動くかを確認するためのテストを自動化します。
.github/workflowsフォルダ内に、テスト実行用のワークフローファイルを作成する- ファイルをリポジトリにプッシュする
- GitHub Actionsが自動的にテストを実行する
ビルド実行用のワークフローを作成する
テストの流れができたら、同じ要領でビルドを自動化するワークフローも用意します。
.github/workflowsフォルダ内に、ビルド実行用のワークフローファイルを作成する- 対象プラットフォーム(AndroidやiOSなど)の設定を記述する
- ファイルをリポジトリにプッシュし、ビルドを実行する
実行結果を確認する
ワークフローが動いたあとは、結果をきちんと確認する習慣をつけておきましょう。
- 「Artifacts」から、ビルドされた成果物をダウンロードして確認できる
- 「Test Results」から、テストが成功したか失敗したかを確認できる
もしビルドが失敗してしまった場合、原因がエディタ側の設定なのか、ワークフローの記述なのか切り分けが必要になります。ビルドがうまくいかない原因を一つずつ確認したい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
ビルドが正常に完了することを確認できたら、あとは開発を進めるたびにコードをプッシュするだけで、テストとビルドが自動的に走る状態が整います。手作業でビルドしていたころと比べると、確認までのスピード感がかなり変わってくるはずです。
ビルド時間を短縮するキャッシュ設定
GitHub Actionsでビルドを自動化できても、実行のたびに毎回時間がかかっていると、せっかくの自動化のメリットを感じにくくなってしまいます。特にUnityはプロジェクトが大きくなるほど、ビルドにかかる時間も伸びていく傾向があります。
そこで役立つのが、ビルドに必要なデータを使い回すキャッシュという考え方です。UnityプロジェクトにはLibraryフォルダというインポート済みアセットの情報が保存されている場所があり、ここをキャッシュとして保持しておくことで、次回以降のビルドで一から読み込み直す手間を省けます。
具体的には、ワークフローファイルの中でLibraryフォルダをキャッシュ対象として指定しておく方法が一般的です。一度ビルドを実行してキャッシュが作られると、2回目以降のビルドではその情報を再利用できるようになります。
キャッシュがどれくらい効果を発揮するかは、プロジェクトの規模やアセットの量によって変わってきます。小さなプロジェクトではあまり体感できないこともありますが、アセットが多いプロジェクトほど、キャッシュの有無で待ち時間の差を感じやすくなる傾向があります。
なお、キャッシュはあくまで「同じような状態のビルドを繰り返すときの時短」が目的です。

大幅にビルド速度そのものを底上げしたい場合は、次の章で紹介するセルフホステッドランナーのように、マシンスペック自体を見直す方向性も選択肢になります。
GitHub Actions以外が向くケース
ここまでGitHub Actions(GameCI)を中心に紹介してきましたが、プロジェクトの状況によっては他の選択肢の方が合っていることもあります。改めて、どんなときに乗り換えを検討すべきか整理しておきましょう。
セルフホステッドランナーが向くケース
プロジェクトが大きくなり、ビルドのたびに待ち時間がストレスになってきた場合は、セルフホステッドランナーが候補になります。自前のパソコンをビルド専用として登録することで、マシンスペックを自分たちの都合に合わせて選べるようになります。
ただし、その分ビルド用のパソコンを用意して常時稼働させておく必要があり、環境構築やメンテナンスの手間も発生します。頻繁にビルドを回すチームであれば、その手間を差し引いても速度面のメリットが大きいと感じやすい選択肢です。
Unity Build Automationが向くケース
一方で、インフラの管理そのものにあまり時間をかけたくない場合は、Unity Build Automationというクラウド型のサービスが選択肢になります。ローカルにビルド環境を用意しなくても、クラウド上でクロスプラットフォーム向けのビルドを実行できる点が特徴です。
このサービスは、以前「Unity Cloud Build」という名称で提供されていた機能が再編されたものです。名称が変わっている分、別サービスだと勘違いされることもありますが、クラウド上でビルドを自動化するという役割は共通しています。プラン内容やできることは変わっている可能性があるため、利用する際は公式サイトで最新の情報を確認しておくと安心です。
どの方法を選ぶ場合も、いきなり大掛かりな仕組みを組む必要はありません。

まずはGitHub Actionsで小さく始めてみて、プロジェクトの規模やチームの状況に合わせて、必要になったタイミングで他の選択肢を検討していく進め方が現実的だと思います。
よくある質問
-
QGitHub Actionsの無料枠だけでUnityのCI/CDは運用できますか?
-
Aプロジェクトの規模やビルドを実行する頻度によって変わってきます。個人開発や小規模なプロジェクトであれば、無料枠の範囲内で十分に運用できるケースも多いです。一方で、ビルド回数が増えたりプロジェクトが大きくなったりすると、無料枠を超えてしまう可能性もあるため、実際の利用状況を見ながら必要に応じて有料プランやセルフホステッドランナーへの切り替えを検討すると安心です。
-
QCode CoverageやAddressablesもCIパイプラインに組み込めますか?
-
A組み込むこと自体は可能です。たとえばテストの網羅率を計測するCode Coverageや、コンテンツを個別にビルドできるAddressablesも、ワークフローの中に処理を追加することで自動化に対応できます。ただし、それぞれ設定の仕方や注意点が異なり、内容も専門的になってくるため、まずは今回紹介した基本のテスト・ビルド自動化を安定させたうえで、必要に応じて少しずつ範囲を広げていくのがおすすめです。
-
QUnity Build AutomationとGitHub Actionsは併用できますか?
-
A仕組みとしては併用すること自体は可能です。ただし、どちらもビルドを自動化するという同じ役割を持っているため、両方を同時に本格運用すると管理が煩雑になりやすいです。基本的にはどちらか一方を主軸に据えて、もう片方は特定の用途に絞って使うなど、役割を分けて考えると運用しやすくなります。








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