1. はじめに
UnityでAndroidやiOS向けにゲームをビルドする際、「IL2CPP build failed」というエラーに遭遇したことはありませんか?このエラーが発生すると、ビルドが正常に完了せず、ゲームを実機やストアにリリースできなくなってしまいます。特にモバイル向けの開発では、IL2CPPは必須のバックエンド技術となるため、このエラーの原因をしっかり理解し、適切に対応することが重要です。
この記事では、「IL2CPP build failed」エラーの主な原因を分かりやすく解説し、それぞれの解決策を紹介していきます。エラーメッセージの読み解き方から、具体的な設定の確認方法、スクリプトの修正ポイントまで、実際に試せる対処法を詳しく紹介します。
この記事を読めば、以下のことが分かります。
- 「IL2CPP build failed」エラーの発生原因
- エラーメッセージの意味と対処法
- Unityの設定やスクリプトの問題を解決する方法
- Android/iOSのビルドを成功させるためのポイント
これから、よくある原因を一つずつ確認しながら、解決策を見つけていきましょう!
2. 「IL2CPP build failed」エラーの主な原因
UnityでAndroidやiOS向けにビルドを行う際、「IL2CPP build failed」というエラーが発生することがあります。このエラーは、IL2CPP(Intermediate Language To C++)というスクリプトバックエンドを使っているときに起こるもので、原因はさまざまです。ここでは、よくある原因を詳しく解説します。
1. 環境設定の問題
✅ Unityのバージョンが古い
Unityのバージョンが古いと、IL2CPPビルドに必要な機能が不足している可能性があります。特に、AndroidやiOS向けにビルドする場合、新しいOSバージョンとの互換性が求められます。
🔹 解決策
- Unity Hubを開いて、最新の安定版にアップデートする。
- 公式のUnityダウンロードページで最新情報を確認する。
✅ 必要なモジュールがインストールされていない
AndroidやiOS向けにIL2CPPビルドを行うには、Unityの追加モジュールが必要です。特に、Android向けには NDK、SDK、JDK、iOS向けには Xcode が正しく設定されている必要があります。
🔹 解決策
- Android
- Unity Hubで 「Android Build Support」 をインストール。
- 追加オプションで「OpenJDK」「Android SDK & NDK Tools」にチェックを入れる。
Edit > Preferences > External Tools
で、正しいNDK/SDKが設定されているか確認する。
- iOS
- Macに Xcode をインストール(最新版を推奨)。
Preferences > Locations
で適切なXcodeバージョンが選択されているか確認する。
2. スクリプトの問題
✅ C#コードの互換性エラー
IL2CPPは Ahead-of-Time(AOT)コンパイル を採用しているため、実行時コンパイル(JIT)を必要とする一部のC#の機能は使用できません。特に、System.Reflection
を用いた動的コード生成が原因でエラーが発生することがあります。
🔹 解決策
- リフレクションを使うコード(
Type.GetType()
など)を最小限にする。 - ジェネリック(Tを使った動的なクラス) の使用を減らす。
link.xml
を使用して、AOTコンパイルで必要なコードがストリップされないようにする。
3. アセットやパッケージの競合
✅ 古いプラグインやアセットの影響
Unity Asset Storeからダウンロードしたプラグインの中には、IL2CPPと相性が悪いものがあります。特に 古い.NET互換のプラグイン はエラーを引き起こすことが多いです。
🔹 解決策
Window > Package Manager
を開き、 使用していないプラグインを削除 する。- 公式フォーラムで プラグインの最新バージョン をチェックする。
✅ AddressablesやScriptable Objectsの影響
Unityの Addressablesシステム や Scriptable Objects には、特定の状況でIL2CPPビルドに問題を起こすバグがあることがあります。
🔹 解決策
Edit > Player Settings > Other Settings
の “Managed Stripping Level” をLow
に設定する。- Addressablesのバージョンを最新にアップデート する。
4. ビルド設定のミス
✅ IL2CPPではなくMonoが選択されている
AndroidやiOS向けのビルドでは、スクリプトバックエンドに IL2CPP
を選択する必要があります。しかし、 間違ってMonoを選んでいる と、IL2CPP特有のエラーが発生します。
🔹 解決策
File > Build Settings
を開く。Player Settings
をクリック。Other Settings
内の “Scripting Backend” を IL2CPP に変更。
✅ API Compatibility Levelの設定ミス
Unityの API Compatibility Level
が適切に設定されていないと、特定のコードがコンパイル時にエラーになることがあります。
🔹 解決策
Edit > Project Settings > Player > Other Settings
- API Compatibility Level を
.NET Standard 2.1
に変更。
5. 外部ツールの影響
✅ Xcodeのバージョンが古い(iOS)
iOS向けのビルドでは、 Xcodeのバージョンが古い とIL2CPPのビルドが失敗します。
🔹 解決策
- MacのApp Storeから 最新のXcode をインストールする。
sudo xcode-select --switch /Applications/Xcode.app
をターミナルで実行し、Xcodeのバージョンを正しく設定する。
✅ Android NDK/SDKのバージョンが正しくない(Android)
Androidビルドに必要なNDK/SDKのバージョンが合っていないと、IL2CPPビルドが失敗します。
🔹 解決策
Edit > Preferences > External Tools
で、 推奨バージョンのNDK/SDKが設定されているか確認 する。Project Settings > Player > Other Settings
で “Target API Level” を “Automatic” に設定。

「IL2CPP build failed」エラーの原因はさまざまですが、大きく分けると 環境設定、スクリプト、アセットの競合、ビルド設定、外部ツール の5つに分類できます。どの部分に問題があるかをチェックしながら、一つずつ解決していきましょう!
3. IL2CPPビルドエラーの解決策
「IL2CPP build failed」エラーが発生すると、ビルドが完了せずにゲームを実行できなくなってしまいます。しかし、エラーメッセージを確認し、適切な対処をすれば解決できます。このステップでは、よくある原因ごとに解決策を解説します。
1. Unity環境のチェック
まずは、Unityの環境が正しく設定されているか確認しましょう。以下の点をチェックしてください。
✅ Unityのバージョンを最新にする
IL2CPPの仕様は頻繁に更新されるため、古いバージョンのUnityでは正常に動作しないことがあります。Unity Hubを開いて、最新のLTS(Long Term Support)版をインストールし、プロジェクトのUnityバージョンをアップデートしましょう。
✅ ビルド設定を確認する
- Unityのメニューから 「File」>「Build Settings」 を開きます。
- 「Platform」を Android または iOS に設定し、「Switch Platform」をクリック。
- 「Scripting Backend」が IL2CPP になっていることを確認。
- もし「Mono」になっている場合は、IL2CPPに変更 しましょう。
- 「Target Architecture」が適切に選択されていることを確認。
- Androidなら「ARMv7」「ARM64」を選択。
- iOSなら「Universal」または「ARM64」を選択。
✅ 必要なモジュールをインストールする
Unity Hubを開き、以下のモジュールがインストールされているか確認してください。
- Android Build Support
- NDK & SDKを含める
- iOS Build Support
- Xcode用のビルドツールを含める
もし不足している場合は、Unity Hubから追加してください。
2. スクリプトエラーの修正
C#のコードに問題があると、IL2CPPビルドでエラーになることがあります。以下の点をチェックしましょう。
✅ [RuntimeInitializeOnLoadMethod]の誤用を修正[RuntimeInitializeOnLoadMethod]
を使うと、ゲーム起動時に自動実行されるメソッドを指定できますが、static でないメソッドに適用するとエラーになります。
❌ NG例
[RuntimeInitializeOnLoadMethod]
public void Initialize() { } // static でないためエラー
✅ OK例
[RuntimeInitializeOnLoadMethod]
private static void Initialize() { }
✅ System.Reflectionを避ける
IL2CPPは リフレクション(System.Reflection) をサポートしていません。リフレクションを使っている場合、MethodInfo.Invoke()
などを削除するか、AOT(Ahead-of-Time Compilation)用の対策をしましょう。
✅ ジェネリック(List<T>など)の使い方に注意
IL2CPPでは特定のジェネリックの使い方がエラーを引き起こすことがあります。例えば、以下のように 型引数をランタイムで変更 するコードはNGです。
❌ NG例
Type t = typeof(List<>).MakeGenericType(typeof(int));
object obj = Activator.CreateInstance(t);
✅ OK例
List<int> numbers = new List<int>();
3. パッケージの更新と整理
古いパッケージや競合するアセットが原因でエラーになることがあります。Unityの 「Package Manager」 を開いて、以下をチェックしてください。
✅ 不要なパッケージを削除
Window > Package Manager
を開く- 使っていないパッケージを削除 する
- 特に古いバージョンの「Burst」「Collections」「Jobs」などのパッケージがある場合は更新する
✅ 古いアセットを削除・更新
- 「Assets」フォルダ内で 長期間更新されていないアセット があれば、削除やアップデートを検討する。
4. ビルド設定の最適化
IL2CPPのビルド設定が正しくないと、エラーが発生することがあります。以下の設定を見直しましょう。
✅ Player Settingsの確認
- 「Edit」>「Project Settings」 を開く
- 「Player」タブを開き、「Other Settings」を確認
- 「Scripting Backend」を IL2CPP に設定
- 「API Compatibility Level」を
.NET Standard 2.1
に変更 - 「Enable ARM64」を有効にする(Androidの場合)
✅ Gradleの設定(Android)
- 「Build Settings」で「Custom Gradle Template」を有効にし、
gradle.properties
を編集。 - 以下のオプションを追加すると、メモリ不足のエラーが解消することがあります。iniコピーする編集する
org.gradle.jvmargs=-Xmx4096M
5. 外部ツールの確認
✅ Xcodeのバージョンを最新にする(iOS)
Xcodeのバージョンが古いと、IL2CPPの変換処理が失敗することがあります。最新のXcodeをApp Storeからインストールし、xcode-select
コマンドでバージョンを確認してください。
xcode-select --print-path
✅ 適切なNDK/SDKを使用する(Android)
- Unity Hubで「Android NDK & SDK」を 推奨バージョンに設定 する。
- NDKのバージョンが古いと
clang++
のエラーが発生するので、適切なバージョンを使用。
✅ ストレージとメモリを確保
- IL2CPPのビルドはメモリを大量に使用するため、ストレージの空き容量を増やす ことで解決する場合があります。
まとめ
「IL2CPP build failed」エラーは 環境設定・スクリプト・ビルド設定 のいずれかに原因があります。
- Unityを最新に更新し、必要なモジュールをインストール
- スクリプトエラー(リフレクション、ジェネリックの使用ミス)を修正
- パッケージを整理し、古いアセットや競合するアセットを削除
- ビルド設定(IL2CPP、API Compatibility Level、Gradle)を見直す
- XcodeやAndroid NDKのバージョンを適切に管理する

これらをチェックすることで、IL2CPPビルドエラーを解決できるはずです! 🚀
4. 具体的なトラブルシューティング
IL2CPPのビルドエラーは、発生するエラーメッセージによって原因が異なります。ここでは、よくあるエラーメッセージとその解決策を紹介します。
① Failed running /path/to/il2cpp.exe の場合
エラーメッセージの例
Failed running /path/to/il2cpp.exe
IL2CPP error for method 'System.Void MyClass::MyMethod()'
原因
- IL2CPPの変換プロセス中にエラーが発生
- スクリプト内で使用しているコードがIL2CPPと互換性がない
- .NET Standard 2.1に対応していないライブラリを使用している
解決策
- スクリプトの修正
System.Reflection
などの動的な型取得を避けるMarshal
やSystem.Linq.Expressions
の一部の機能がIL2CPPでは動作しないので注意[RuntimeInitializeOnLoadMethod]
の誤用がないか確認generic
の制約 (List<T>
の使用など) に注意する
- ビルド設定の確認
Player Settings
→Other Settings
でAPI Compatibility Level
を.NET Standard 2.1
に設定
- キャッシュクリア
Edit
→Preferences
→Cache Server
でキャッシュをクリアしてビルドを再試行する
② error CSXXXX(C#関連エラー)が出る場合
エラーメッセージの例
error CS0246: The type or namespace name 'SomeNamespace' could not be found
error CS0103: The name 'SomeMethod' does not exist in the current context
原因
- C#のコードミス
- 参照しているアセットやパッケージが正しくインポートされていない
Assembly Definition
の設定ミスによりスクリプトが参照できない
解決策
- コードの確認
- スクリプト内で使用している名前空間 (
using SomeNamespace;
) が適切かチェック - クラス名のスペルミスがないか確認
- スクリプト内で使用している名前空間 (
- アセンブリの設定確認
Assembly Definition
を使っている場合、適切に参照設定されているか確認
- パッケージの再インストール
Window
→Package Manager
で該当のパッケージを削除し、再インストールする
③ clang: error: linker command failed(iOSのビルド失敗)
エラーメッセージの例
clang: error: linker command failed with exit code 1 (use -v to see invocation)
Undefined symbols for architecture arm64
原因
- Xcodeのバージョンが古い
- 使用しているプラグインやネイティブコードがarm64に対応していない
Framework
の設定ミス
解決策
- Xcodeのアップデート
App Store
からXcodeを最新バージョンに更新する- Unityのバージョンと互換性があるか確認
- リンク設定の見直し
Player Settings
→Other Settings
でTarget Architectures
がARM64
に設定されているか確認iOS Resolver
のキャッシュを削除し、再度ビルドする
- プラグインの確認
Plugins/iOS
にあるカスタムネイティブプラグインのmeta
ファイルを確認し、iOS
向けに設定されているかチェック
④ Gradle build failed(Androidビルドの失敗)
エラーメッセージの例
Execution failed for task ':launcher:mergeDexDebug'.
com.android.builder.dexing.DexArchiveMergerException: Unable to merge dex
原因
- Gradleの設定が適切でない
Android SDK
やNDK
のバージョンがUnityに適合していない- 依存関係が競合している
解決策
- SDKとNDKのバージョンをチェック
Edit
→Preferences
→External Tools
で適切なSDKとNDKが設定されているか確認File
→Build Settings
→Android
のPlayer Settings
でScripting Backend
がIL2CPP
になっているか確認
- Gradleキャッシュの削除
Library/
とTemp/
フォルダを削除し、再ビルドする
- Gradleの依存関係を解決
gradle.properties
のorg.gradle.jvmargs=-Xmx4096m
のメモリ制限を増やすbuild.gradle
で競合しているライブラリのバージョンを統一する
まとめ
il2cpp.exe
のエラーはスクリプトやAPIの互換性をチェック- C#エラー(CSXXXX)はスクリプトの記述ミスやアセンブリ設定を確認
- iOSの
clang
エラーは Xcodeとプラグインの設定を見直す - Androidの
Gradle build failed
は SDK/NDKのバージョンを確認

この方法を試せば、大抵の IL2CPP build failed
エラーは解決できます。まずは エラーメッセージを確認 し、適切な解決策を試してみましょう!
よくある質問(FAQ)
- QIL2CPPを使わずにビルドすることは可能?
- A
はい、可能です。ただし、Android/iOS向けのアプリをリリースする場合はIL2CPPの使用が推奨されています。
Unityでは 「Mono」 と 「IL2CPP」 の2つのスクリプティングバックエンドを選択できます。- Mono: 開発中のデバッグには便利ですが、パフォーマンスがIL2CPPに比べて劣る場合があります。
- IL2CPP: コードをネイティブC++に変換して実行するため、最適化されたパフォーマンスを発揮します。
特に iOSではIL2CPPが必須 なので、IL2CPPを無効にすることはできません。Androidでは
Player Settings > Other Settings > Scripting Backend
で Mono を選択することでIL2CPPを使わずにビルドできますが、最終的にはIL2CPPでの動作確認が必要になるでしょう。
- QIL2CPPのビルド時間が長すぎる、短縮する方法は?
- A
IL2CPPのビルドは、コードをC++に変換するため時間がかかることがあります。以下の方法で短縮できます。
- インクリメンタルビルドを有効にする
Edit > Preferences > General
で “Cache Server Mode” を “Enabled” にするPlayer Settings > Other Settings
で “Strip Engine Code” を有効にする
- ビルド時のコード最適化を減らす
Player Settings > Other Settings
の “IL2CPP Code Generation” を “Faster (smaller) builds” に設定する
- 不要なアセットやスクリプトを整理する
Window > Package Manager
で使わないパッケージを削除Resources.Load()
を減らす(動的ロードの影響を減らす)
- マルチスレッドを活用する
- 高性能なCPUを搭載したPCでのビルドが推奨
- SSDにUnityプロジェクトを保存することで、ビルド時間を短縮できる
- インクリメンタルビルドを有効にする
- QUnityのバージョンアップ後にIL2CPPビルドが通らなくなったらどうする?
- A
Unityのバージョンアップ後にビルドエラーが発生する場合、以下の点を確認してください。
- IL2CPPのバージョンが適切か確認
- Unity Hubの “Add Modules” から、対応するIL2CPPモジュールをインストール
- プロジェクトのキャッシュをクリアする
Edit > Preferences > Cache
で “Clean Cache” を実行Library
フォルダを削除してUnityを再起動する
- パッケージの更新をチェック
Window > Package Manager
で “Update All” を実行- 互換性のないアセットがないか確認(特に
Burst
,Jobs
系)
- 公式のバグレポートやフォーラムをチェック
- Unityの Issue Tracker でバージョン関連のバグが報告されていないか確認
- フォーラムで他の開発者の解決策を探る
特に LTS(Long Term Support)版のUnity を使うことで、安定したビルドができることが多いです。
- IL2CPPのバージョンが適切か確認