1. はじめに
Unityでゲームやアプリを開発していると、長いリストや大量のテキストを表示する必要が出てくることがあります。例えば、アイテムリスト、リーダーボード、チャット画面など、限られたスペースで多くの情報を扱う場面は少なくありません。
そんなときに便利なのが「スクロールバー」です。スクロールバーを使うことで、画面のスペースを有効活用しながら、ユーザーにストレスのない操作体験を提供できます。
しかし、初めてUnityでスクロールバーを設定しようとすると、「どうやって使うの?」「どこを調整すればいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Unity初心者でも簡単に理解できるように、スクロールバーの使い方を基本から丁寧に解説していきます。リストやテキストをスムーズにスクロール表示させる設定手順を学び、開発に役立てましょう。
Unityを触ったことがないという方はコチラの記事から見てみてください!
2. スクロールバーの基本
スクロールバーとは?
スクロールバーは、画面上に収まりきらないコンテンツを操作しやすくするためのUI要素です。例えば、長いテキストやリストを縦や横にスクロールして表示できるようにするために使われます。Unityでは、スクロールバー機能を簡単に実装できる「Scroll View」というコンポーネントが用意されています。

UnityのScroll Viewの仕組み
Unityの「Scroll View」は以下の3つの主要要素から構成されています:
- Scroll Rect:
スクロール可能な領域を管理します。この領域内でユーザーがコンテンツをスクロールできます。 - Content:
実際にスクロールされるコンテンツ(リストやテキスト)が配置される部分です。コンテンツのサイズがScroll Viewの表示領域を超える場合にスクロールが有効になります。 - Scrollbar:
スクロール操作を視覚的に補助するためのバーです。縦スクロール用と横スクロール用の2種類があり、必要に応じて有効化します。
なぜスクロールバーを使うのか?
- ユーザー体験の向上:
コンテンツを効率的に表示し、限られた画面スペースを有効活用できます。 - 直感的な操作:
スクロールバーは多くのアプリやゲームで使われており、ユーザーにとって馴染みのあるUI要素です。 - 柔軟なデザイン:
Unityではスクロールバーの見た目や動作をカスタマイズできるため、アプリのデザインに合わせた調整が可能です。
注意点
- スクロールバーを使用する場合は、Contentのサイズ設定が重要です。不適切な設定だと、スクロールが正しく動作しない場合があります。
- 無駄にスクロールバーを表示すると、画面がごちゃごちゃして見えることがあります。本当に必要な場面だけに使いましょう。
3. スクロールバーを設定する手順
Unityでスクロールバーを設定するには、「Scroll View」コンポーネントを利用します。以下の手順に従えば、簡単にスクロールバーを追加できます。
1. プロジェクトの準備
- 新規プロジェクトまたは既存プロジェクトを開く
- Unity Editorを開き、プロジェクトを用意します。スクロールバーの設定にはUIモジュールが必要なので、インストールされていることを確認してください。
- UI Canvasを確認
- UI要素を配置するためにCanvasが必要です。Hierarchyウィンドウで「Canvas」が存在しない場合は、右クリック → UI > Canvas を選んで作成します。
2. Scroll Viewを追加する
- Scroll Viewの作成
- Hierarchyウィンドウで右クリック → UI > Scroll View を選択します。
- 作成される要素には、以下のような構造が含まれます:
- Scroll View (親オブジェクト)
- Viewport (表示領域)
- Content (スクロールする実際のコンテンツ)
- 縦・横のScrollbar(必要に応じて有効化可能)
- サイズと位置の調整
- Scroll Viewオブジェクトを選択し、Rect Transformでサイズや位置を調整します。これにより、スクロール可能な領域を設定できます。
3. コンテンツを配置する
- Contentの設定
- Hierarchyウィンドウ内のScroll Viewを展開し、Contentオブジェクトを選択します。
- ここに、リストやテキストなど、スクロール可能なコンテンツを配置します。
- Contentのサイズを調整
- Content内の要素が多い場合、自動でサイズが調整されないことがあります。Rect Transformの高さや幅を手動で設定して、コンテンツが収まるように調整しましょう。
4. スクロールバーをカスタマイズする
- Scrollbarの有効化/無効化
- Scroll ViewのInspectorで「Horizontal Scrollbar」または「Vertical Scrollbar」のチェックをオン/オフすることで、必要な方向のスクロールバーを有効化できます。
- 見た目の調整
- Scrollbarオブジェクトを選択して「Image」コンポーネントをカスタマイズします。色や形状を変更することで、デザインに合わせたスクロールバーを作成できます。
- 動作設定
- Scroll RectのInspectorで「Movement Type」を設定します:
- Unrestricted: 制限なしでスクロール可能
- Elastic: 端に到達するとバウンドする動作
- Clamped: スクロールがコンテンツの範囲内に制限される
- Scroll RectのInspectorで「Movement Type」を設定します:
5. 動作を確認する
- Playモードでテスト
- Unity Editorで再生ボタンを押して、スクロールバーが正しく動作するか確認します。
- 縦・横スクロールが期待通りに動いているかをチェックしてください。
- 問題があれば調整
- スクロールが動かない場合は、Contentサイズが適切に設定されているか確認しましょう。
トラブルシューティング
- スクロールが動かない:
Scroll Rectの「Content」が正しく設定されているか確認します。 - コンテンツが見切れる:
ViewportのサイズがContentよりも小さく設定されているか確認してください。
4. 実践例: リストをスクロール表示する
ここでは、UnityのScroll Viewを使って、動的に生成したアイテムリストをスクロール表示する方法を解説します。この例では、ボタンをリストとして表示しますが、テキストや画像にも応用できます。
完成イメージ
- 画面構成:
- Scroll View内に複数のボタンを縦に並べたリストが表示されます。
- スクロールバーを使用して全てのアイテムを確認できます。
1. Scroll Viewを作成する
- 「3. スクロールバーを設定する手順」の内容に従い、Scroll Viewを作成し、Contentを設定します。
2. Contentの設定
- Contentオブジェクトを選択し、Vertical Layout Groupコンポーネントを追加します。
- Child Alignment: 上部中央(Middle Center)を選択
- Control Child Size: 高さをオンにする(Widthは必要に応じてオン)
- Spacing: 各アイテム間の余白を設定
3. ボタンPrefabを作成する
- Hierarchyで右クリック → UI > Button を選択してボタンを作成します。
- ボタンの見た目やテキストを編集し、Prefabとして保存します。
- 作成したボタンをProjectウィンドウにドラッグしてPrefab化します。
4. スクリプトを作成してリストを動的に生成する
- Scriptsフォルダを作成し、その中に新しいC#スクリプト(例:
ScrollViewExample.cs
)を作成します。 - 以下のコードを記述します。
using UnityEngine;
using UnityEngine.UI;
public class ScrollViewExample : MonoBehaviour
{
[SerializeField] private GameObject buttonPrefab; // 作成したボタンPrefab
[SerializeField] private Transform content; // Scroll ViewのContent
void Start()
{
GenerateList(20); // リストを20個生成
}
void GenerateList(int itemCount)
{
for (int i = 0; i < itemCount; i++)
{
// ボタンを生成
GameObject button = Instantiate(buttonPrefab, content);
button.GetComponentInChildren<Text>().text = "Item " + (i + 1); // ボタンのテキストを設定
}
}
}
5. スクリプトを適用する
- Scroll Viewオブジェクトを選択します。
- 上記スクリプトをScroll Viewにアタッチします。
- Inspectorで以下を設定します:
- Button Prefab: 作成したボタンのPrefabをドラッグ&ドロップ
- Content: Scroll View内のContentオブジェクトをドラッグ&ドロップ
6. 動作確認
- 再生ボタンを押してPlayモードに切り替えます。
- Scroll View内にリストが動的に生成され、スクロールできることを確認します。
注意点
- Contentのサイズ:
ContentのサイズはVertical Layout Groupによって自動調整されるため、手動で設定する必要はありません。 - パフォーマンス:
非常に多くのアイテムを生成する場合、メモリ使用量が増える可能性があります。この場合、オブジェクトプールを使用してパフォーマンスを向上させることを検討してください。
5. トラブルシューティング
Scroll Viewやスクロールバーを設定するとき、動作が期待通りにならないことがあります。このセクションでは、よくあるトラブルとその解決方法を紹介します。
1. スクロールが動かない
問題の原因:
- ContentのサイズがScroll Viewの表示領域より小さい場合、スクロールは発生しません。
- Scroll Rectコンポーネントの設定が正しくない可能性があります。
解決方法:
- Contentのサイズを確認:
- Content内の要素がScroll Viewのサイズより大きくなるように設定します。
- Vertical Layout GroupまたはHorizontal Layout Groupを使用して、自動的にサイズを調整しましょう。
- Scroll Rectの設定を確認:
- Scroll Rectの「Content」フィールドに正しいContentオブジェクトが割り当てられているか確認します。
2. スクロールバーが表示されない
問題の原因:
- Scroll View内のContentが小さすぎて、スクロールが不要と判断されている場合。
- スクロールバー自体が非表示になっている可能性があります。
解決方法:
- Contentサイズを調整:
- Content内の要素数を増やすか、要素のサイズを大きくしてみてください。
- Scrollbarの設定を確認:
- Scroll ViewオブジェクトのInspectorで、HorizontalまたはVertical Scrollbarが有効になっているかを確認します。
- ScrollbarオブジェクトがHierarchy内に存在し、アクティブ(表示状態)であることを確認します。
3. スクロールの動きがカクカクする
問題の原因:
- スクロール中のフレームレートが低下している可能性があります。
- 動的にリストを生成する際にパフォーマンスが最適化されていない場合があります。
解決方法:
- フレームレートを確認:
- Unity Editorの「Stats」ウィンドウを開き、フレームレートを確認します。
- フレームレートが低い場合、他のオブジェクトやスクリプトが負荷をかけている可能性があります。
- オブジェクトプールを使用:
- リストアイテムを動的に生成する場合、オブジェクトプールを導入してリストアイテムを再利用することでパフォーマンスを改善します。
4. スクロールバーのデザインが崩れる
問題の原因:
- ScrollbarオブジェクトのImageコンポーネントやサイズ設定が正しくない場合。
- 不要なPaddingやMarginが設定されている可能性があります。
解決方法:
- Imageコンポーネントを確認:
- ScrollbarのImageコンポーネントが正しいスプライトを使用しているか確認します。
- スプライトの「Slice」設定が適切であることを確認してください。
- Rect Transformを調整:
- Scrollbarオブジェクトのサイズが適切であることを確認します。
- Scroll View内でScrollbarが重ならないよう、PaddingやSpacingを調整します。
5. コンテンツが表示されない
問題の原因:
- Content内の要素が非表示になっている場合。
- ViewportのMask設定が正しくない可能性があります。
解決方法:
- Contentの子オブジェクトを確認:
- Content内の要素がアクティブ(表示状態)になっているか確認します。
- Viewportの設定を確認:
- Viewportオブジェクトに「Mask」コンポーネントが追加されているか確認します。
- Maskが適切に設定されていない場合、スクロール可能な領域が正しく表示されません。

トラブルを解決するためには、まず問題の原因を特定することが重要です。この記事で紹介したポイントを参考に、スクロールバーが正しく動作するように調整しましょう。問題が解決したら、次はスクロールビューをカスタマイズして、ユーザー体験をさらに向上させる工夫を試してみてください!
6. まとめ
Unityでのスクロールバーの使い方について解説しました。この記事を通じて、スクロールビューの基本的な仕組みや設定方法を理解し、実際に動的なリストを作成する手順まで学んでいただけたと思います。
主なポイントの振り返り
- スクロールバーの役割:
長いリストやテキストをスムーズに表示するための重要なUI要素です。 - 基本設定:
UnityのScroll Viewを使えば、簡単にスクロール可能な領域を作成できます。 - 動的なリスト生成:
コードを使用してリストアイテムを動的に追加し、柔軟なUI設計が可能です。 - トラブルシューティング:
よくある問題への対処法を学ぶことで、スムーズに開発を進められます。
次のステップ
- スクロールバーのカスタマイズ:
デザインを工夫して、アプリやゲームのテーマに合わせたUIを作成してみましょう。 - 応用:
スクロールビューを使って画像ギャラリーやチャット画面を作るなど、さらに高度な実装に挑戦してみてください。

UnityのUI機能をしっかりマスターすることで、ユーザー体験の向上に繋がります。ぜひこの記事を参考に、スクロールバーを活用した魅力的なインターフェースを作成してみてください!